nu notebook

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消毒液はアルコール濃度83%を超えるといろいろあって殺菌効果が落ちる

以下のリンク先(2年くらい前の記事です)を読んで、

www3.nhk.or.jp

私は化学と医学の心得はないのですが、

アルコール濃度が70%から83%の酒を対象とし、これより濃度が高い酒は、殺菌効果が落ちるため薄めて使うよう求めています。

アルコール濃度は高ければ高いほど殺菌効果が高いと思っていました。
純度100%のアルコールぶっかければそれが最強、ということではないらしい。

もしかして「使おうとしてもすぐ蒸発してしまうから効果が薄れる」とかいうことだろうか? と思って調べたら

www.chinoshiosya.com

アルコール(エタノール)は、生体膜を透過する一方、中程度の濃度(40%)以上では両親媒性を持つために、細胞膜など脂質膜やタンパク質を変性(細胞膜が壊れ、穴があき、細胞内容物が漏れ出てくる)させる生理作用があります。

原核生物である細菌などに作用すると、タンパク質の変性や溶菌などの殺菌作用があります。

また、ヒトなどの局所作用として収れん作用が現れます。

つまり、ある程度水が存在する状況では、アルコールが膜を変性すると共に、透過したアルコールなどが菌の内圧を高め溶菌などの作用があります。

一方、高濃度ではタンパク質の構造水などの脱水作用が生じるため、変性作用が強く現れます。

(アルコール度数が高い物は、脱水作用により細胞膜など外膜に対して浸透圧による外圧が加わり、溶菌作用を減弱させるように作用)

※詳細なメカニズムはいまだ解明されていません。

すぐ蒸発するから……とかいうトーシロで予想できる範囲の理由ではなく、

  • 菌を殺すというのは、菌の細胞膜を破壊して殺すということ
  • 適切な濃度だとアルコールが菌の膜を変性させて穴を開け、アルコールが中に進入して菌を溶かす→殺せる
  • 高濃度だと膜の変性による穴開けははかどるが、タンパク質から脱水することでアルコールが中に入りにくくなって、菌を溶かしにくい→殺しにくい? 

とのこと。

ただトーシロとしては「溶菌作用が弱まっても、膜を変性させて穴開けた時点で菌は中身出ちゃうから死んじゃうのでは?」と思ってしまうのですが、それだけでは死ななくて、最終的に溶菌までしないと話にならない、ということなんでしょうか?

と思ってさらに調べてたら、Quoraで研究者の方の回答がありました。
基礎医学研究者でしかも実名の回答。最強です。jp.quora.com

Sakai Takayuki, 歯科医院の院長 (2009年〜現在)
回答日時: 2年前 · 執筆者は844件の回答を行い、17.2万回閲覧されています

アルコール(エタノール)の消毒効果は、蛋白の凝固と変性、それと脱水とされています。この効果は、主に細菌や真菌(カビ)などに言われていることで70%~95%で効果を表すとされています。(一般に現在売られているのは、70~80%くらい)100%近いいわゆる純エタノールは、ほとんど効果がないとされており、これは、脱水能が高く細菌表面のタンパク質を凝固させ硬い膜状にさせてしまい菌体内まで浸透できないで蒸発してしまうと習いました。幾分かの濃度の水がないと細胞を破壊できないということです。ただし、コロナウイルスなどに対する効果は、表面のエンベローブの破壊なのでこれは100%でも効果あるようです。

ありがてえなあ。なるほどわかった。
ただ「細菌表面のタンパク質」と「エンベロープ」は違うのか? という点については

ja.wikipedia.org

エンベロープ (envelope) は、単純ヘルペスウイルスやインフルエンザウイルス、ヒト免疫不全ウイルスなど一部のウイルス粒子に見られる膜状の構造のこと[1]。これらのウイルスにおいて、エンベロープはウイルス粒子(ビリオン)の最も外側に位置しており、ウイルスの基本構造となるウイルスゲノムおよびカプシドと呼ばれるタンパク質の殻・層を覆っている[1]。エンベロープの有無はウイルスの種類によって決まっており、分離されたウイルスがどの種類のものであるかを鑑別する際の指標の一つである。 

なるほど完全にわかった。

先生の回答をWikipediaを参考に解釈すると、

  • ウイルスは基本的に本体の外をタンパク質の殻で覆っており、インフルエンザとかコロナとかは、それをさらにエンベロープ(膜)で覆っている
    エンベロープはウイルスにとって、人へ感染するのに必要
  • あまりアルコールの濃度が高いと、1枚目のエンベロープは破壊できるが、2枚目のタンパク質の殻(or 本体の表面?)が脱水してカチカチになってしまい、アルコールがウイルスの体内に入れないので殺せない
  • ただしアルコールの濃度が高くても、エンベロープを破壊するという目的は果たせるので、感染対策としての意味はある

となり、三行で言えば

  1. 濃度100%だとウイルス生き残るけど感染対策にはなる
  2. でも濃度70%~83%の方がウイルスを殺せて確実に感染対策になる
  3. 薄めた方がクオリティ高いなら当然薄めて使うでしょ

という感じ*1

そういうわけなので、これからは消毒液のディスペンサーに手をかざしたら、密かに「お! ウイルスの膜が壊れてプチプチいってんな!」と思って楽しもうと思います。

※結局「脱水してそんなカチカチになるのならやっぱり死ぬのでは?」という疑問は相変わらず解決してませんが、全く触れられていないということは「死なない程度にカチカチになんねん」ということなんだろうと思うことにします

*1:あくまで私がイメージした内容なので、医科学的には誤解があるかもしれません