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好色一代女、字面だけだとハード過ぎる

ja.wikipedia.org

教科書でしか知らない、かつタイトルしか知らない好色一代女ですが、あらすじを読むと結構面白そうな気もします。

あらすじ

「好色庵」に住む一代女は、元来由緒ある家に生まれて、大内の宮仕えをしていたが、13歳の時にある青侍と恋愛事件を起こして追放された[2]。以後、舞妓となり、更に大名の愛妾となって華やかな生活を送ったが、16歳の時、父の負債のために島原の遊女となった[2]。遊里では自己の出自と美貌をもって一時は全盛を誇るが、次第に客が離れ、太夫から天神、天神から鹿恋へと位を下げつつも、13年の年季明けで素人女に戻る[2]。そして、町家の腰元や武家お抱えの髪結女などの勤めをするが長続きせず、歌比丘尼や茶屋女などの売春婦を経て、大坂玉造で夜発として徘徊するも、誰にも相手にされない[2]。

ある雨夜、自らの不行跡のために堕胎した水子の群れが現れ、一代女の良心を責める[2]。また、四条寺町大雲院の仏名会に詣で、五百羅漢堂の諸像にかつて馴染んだ男達の面影を認め、自らの拙い宿業を恥じ、広沢の池に入水しようとするが助けられ、庵を結んで菩提を願う身になった[2]。65歳の頃であった[2]。

……群れ?

どれぐらいの群れなのか

水子の群れということは、母親の中から出ることもなく命を落とした小さい水子たちが群れをなすようにたくさん目の前に現れ、一代女は自らの今までの行いの非道さに気づいて愕然とし……というのをイメージするじゃないですか。

そんなの作者の井原西鶴的にとっては何が何でも絵にしたかったシーンだろう、というか絵にしたに決まってる、探せばどっかにあるだろう……と調べてみたところ、やはりありました。

都市民俗学者である森栗茂一氏の論文「水子供養の発生と現状」の中では、図を交えてこう紹介してあります。*1

また,井原西鶴『好色一代女』巻6「夜護の付声」には,蓮の葉笠のように胞衣をかぶり,腰より下は血にまみれて,はっきりしない声で,「負わりょ,負わりょ」と泣き,「ひどい母様」と恨み申す九十五,六ほど並んだ孕女の姿が描かれている。しかし,その水子たちがタタルという発想は,西鶴の小説にはなく,「水子」とも呼んでいない。

ちょっとイメージと違った。二本足でしっかり立ってる。
ちなみに「胞衣(えな)」というのは「胎児をつつんでいる膜と胎盤」のことだそうです。

あと窓から見てる一代女もそんなビビっていないというか、「分かってはいたけど結構多いな」というくらいの表情ですね。
まあ率直なところ、江戸時代においては堕胎というのはそんなに珍しくもなかったのかもしれません。だからこそ10とか20でなく、読者に「さすがにこいつはヤバいやつだぞ」と思わせるためにも95~96とか出す必要があったと。

なぜ96なのか

それにしても、「96」という数字がやたら中途半端で気になります。なぜ96なのか。

もしかしたら現代語訳された本とかがあるかもしれず、それを本屋で立ち読みしてみたら普通に謎が解けるかもしれませんが、私の住む長崎県大村市には農業書とかスポーツ新聞の類はあっても文芸という概念は存在しないので、本は読まずにそれっぽい理由や理屈を探ってみようと思います。

まず女性がいつまで妊娠可能なのかよく知らなかったので調べたところ、女性の妊娠の限界はだいたい40歳くらいだそうで、これは大昔から変わらないとのこと。
つまり江戸時代の一代女は、40歳までの間に96回堕胎したことになります。

40歳までに96回も堕胎するなんて可能なのでしょうか?
先に引用したあらすじによると、

……大名の愛妾となって華やかな生活を送ったが、16歳の時、父の負債のために島原の遊女となった[2]。

とのことなので、一代女は16歳から堕胎を始めた可能性があります。これはつまり、16歳から40歳まで、つまり最長24年間で96回の堕胎を繰り返したということです。

24年間で96回となると、割り算すると1年できっちり4回。これは日本の季節の数、つまり四季に一致します。

――もし現代において、ちょっと違法な店に勤めていて、季節の変わり目に妊娠しては堕胎してる女友達がいたとしたら、あなただったらどうしますか? 彼女の価値観を尊重する? それとも身体に毒だからやめとけって言う?

季節というのがポイントなら、もしかしたら季節性の処女懐胎という可能性もあるのではという気もするので、その場合はもう応援するしかないでしょう。そうか、今も昔も関係なく、処女懐胎なら堕胎を無料でやってもらえるという道理はないから、一代女は堕胎のためのお金を稼ごうと、身体を売るしかなかったのか……。あれ?

どこに着地しようとしているのかわからなくなったので終わります。

余談:ムーニーちゃん誕生秘話

そんな好色一代女とは一切関係ないんですけど、女性の妊娠関連でいろいろ調べていたら偶然見つけて衝撃だったので貼っておきますね。

www.youtube.com

耳と鼻がよくもげるのは経験則でわかるのですが、鼻がもげたと同時になぜ瞬時に平たい顔族になってしまってるのかが、正直わからなかったです。

もしかしてどの時点かの持ち主にブチィッってやられたとかかもしれない。*2

*1:この論文は好色一代女に関する論文ではありませんが、都合がいいので使わせてもらいます

*2:鼻が取れ、耳が取れ、どこかの時点でブチィッとやられ……とはナレーションしづらいもんな